2章 傭兵

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「構えな」 レオはそうユージーンに言ってから、ハンマーを振り上げる。 そして一歩。たった一歩で十二分離れていた間合いを詰めてきた。 決して速くはない。 だが、零の制止状態から最高速までのラグがレオにはほとんど存在しない。 ユージーンからして見れば、突然目の前に現れたように感じていた。 助走をつけたレオの振り下ろしの一撃。 受けようと大剣を構えるユージーンだったが、慌てて回避に変更。 横に跳んだ。 攻撃後で隙だらけに見えるレオを放って、再び間合いを開くユージーン。 (今のを受けていたら、オレの負けだったな) そう。 このデュエルは『半減決着モード』。 どちらかのライフが半分を下回りイエローになった瞬間、そのプレイヤーの敗北となる。 レオはSTA(筋力)重視らしく、武器も相俟ってその一撃はユージーンをも上回る。 先程の攻撃をもしユージーンが防御出来ていても、“抜けた”ダメージ分でユージーンのライフはイエロー表示になっていただろう。 「来ないのか? 大将さん。 来なけりゃ、あんたに勝ちの目は無いぜ」 ハンマーをまるで玩具のように軽々振り回しながら、レオは口端を吊り上げる。 ギリリとユージーンは唇を噛む。 ユージーン自身分かっている。 ユージーンの持つレジェンダリーウェポン『魔剣グラム』のエクストラ効果『エセリアルシフト』は、魔剣を非実体化して敵の剣や盾の防御をすり抜けてしまうもの。 だが、これは完全に攻撃の為の効果であって防御には無意味。 攻めなければ意味はない。 分かってはいる。 「おら、もう一回来てみろよ」 挑発的な言葉を投げて、レオは構える。 “再び、あの構えをとった”。 攻めるしかない。 そう分かっていても、ユージーンにはレオのあの構えを破る自信がなかった。 デュエル開始直後、結果としてライフの三分の一を一気に失ったあれを。 ――――それでも (攻める!) 覚悟を決めた。 「オオオァァァッ!!」 獅子の如き雄叫びをあげ、ユージーンがレオに突進する。
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