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真紅の尾をひいてサラマンダーの真骨頂、重突進をかける。
更にユージーンの構えを見て、クラインはピンときた。
ユージーンは、彼自身が最も信頼するソードスキルで勝負をかけるつもりだと。
ヴォルカニック・ブレイザー。
ユージーンが編み出したOSS(オリジナルソードスキル)。
二人が交差し、眩むようなライトエフェクトがぶつかり合う。
交差は一瞬。
ライトエフェクトが収まると、二人は数メートルの距離をあけ、互いに背を向けたまま固まっていた。
それはまるでどこぞの剣客同士の決闘のような静けさの後、ユージーンの上半身が赤いエンドフレイムに包まれ、やがて遅れて全身が消失した。
残されたユージーンのリメインライトがふわふわと浮遊する。
「…………旦那が、負けた?」
呆然と口を開けて、クラインが虚ろな声を出す。
勝負前に、仮に負けてもなどと言いはしたが、実際にユージーンが負けるなどとはクラインは思っていなかった。
クラインだけではない。
観客の誰一人、アスナとてこんな結末は予想していなかった。
「――――クク、アハハハハ!!」
静寂を破る無粋な笑い声。
神聖とも感じられる決闘の空間に、シェイドが無遠慮に足を踏み入れる。
「無様なものですねえ!
サラマンダー最強がこの程度とは」
『クク』と押し殺しきれない笑い声がまだ聞こえる。
我に返った観客の一人が、ユージーンのリメインライトへ蘇生魔法を唱え始める。
しかし、もうシェイドはユージーンの事などどうでもいいというようにその光景に背を向け、クラインへ向き直る。
「これで僕達の勝ち、ですね?」
「――いいや」
否定したのはレオだった。
どういう事だ、と訊こうとしてシェイドは気付く。
遅れてクライン達も気付いた。
レオのライフが、イエローに突入していた。
ユージーンの死亡のインパクトが強くつい忘れていたが、このデュエルは『半減決着モード』。
つまり、
「この勝負、引き分けだな」
レオがハンマーを担いでそう言った。
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