3章 断罪者

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土妖精族(ノーム)の男。装備は胸と脚のアーマーのみ。武器はアスナの話によれば戦槌(メイス)。 しかしやはり、この男を印象づけるのは傷の走る左眼だろう。 「また来ないのかと思って冷や冷やしたぜ」 「オレは約束の時間には、早すぎず遅すぎず来るたちなんだよ」 軽口にもまるで動じないレオ。 それならそれでいい。キリトとしても、別にこの男と談笑したくて来たわけではない。 さっさと本題に入ろうと思った時、レオが右手を振った。キリトには見えないが、あの動作はシステムウインドウを開くものだ。 「なにを……」 尋ねるキリトの前にウインドウが出現。それはデュエルの申し出だった。 「これは何の真似だ?」 「クク……。おいおい、まさかタダで情報貰えるだなんて思ってなかっただろうな?」 「予想はしてたけど、あまりにベタベタなもんでね」 「口が減らねえなぁ」 言った通りキリトもこうなる事は予想していた。情報をちらつかせて、わざわざ指定の場所に呼び出したのだから取引になるとは思っていた。だがまさかその取引がデュエルとは予想していなかったが。 「一つ訊くが、何で戦いたいんだ?」 「英雄の剣ってのを是非とも味わってみたくてな」 「まともに答える気はないって事か」 キリトはもう一度ウインドウを見る。デュエル方式は『全損決着モード』。 「分かった。受けてやるよ」 OKボタンをタッチすると、互いの名前が表示され十秒のカウントが開始される。 レオはニヤリと笑い、地面に立てていたメイスの柄を右手で握る。先端にはドングリのような形をした槌。 対して、キリトも背中の鞘から剣を抜く。リズベット作の薄く青みがかった刃の片手剣。 互いに表示されたカウントダウンには目もくれない。視線のみを交わす。 やがて、『DUEL』の文字が閃光を放つ。それと同時にキリトは地を蹴った。
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