3章 断罪者

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「どういう意味だ?」 「あのゲームを終わらせてくれたのはいい迷惑だっつったんだよ。 オレ達、レッドにとっちゃな」 レオがそう吐き捨てる。 レッド。それはSAO時代、プレイヤーのネームカラーに起因する呼び名。 通常、プレイヤーのカラーはグリーン。そこから盗み、障害等のシステム上の犯罪をおかすとそのプレイヤーのネームカラーはオレンジに変わる。 レッドカラーはシステムには存在しない。しかしとあるギルドが存在しないその色を名乗ってから、より危険なプレイヤー、もしくはギルドをレッドと呼称するようになった。 「あの世界は最高だった。許されない力を持つ事を許され、許されない行為がまかり通る。 リアルよりよっぽどシンプルで、リアルよりよっぽどイカレてた(楽しかった)」 歪な笑みで語るレオ。しかしそれが消え去ると、寒気の走る眼でキリトを見る。 「それをお前は終わらせちまった。 くっだらねえ正義感だ。あの世界にいた奴は大なり小なり思っていた筈だ。このままこの世界で生きていたいと願った。 お前だってそうだろ?」 「…………」 キリトは答えない。 彼とて思わなかったわけじゃない。残酷なあのゲームでありながら、ハイレベルの優越感、現実には有り得ないファンタジー、そして何より、アスナと共にいられるならば、ずっとあの世界にとどまっていても構わないと本気で思った事もある。 それでも、キリトはそうしなかった。自ら選んだ。それが間違いだったなんて思わない。 何故なら、アスナを救う事が出来たのだから。 「なるほどな」 答えずともキリトの意志を感じとったのか、レオはつまらなそうに息を吐く。 しかし、その口がまた歪に歪む。 「お前はいいだろうさ。あの世界が終わっても、現実があったから。 だけど他の奴はどうだ? 少なくともプレイヤー殺しをやってたような輩は精神異常って事で病院通い。普通の奴だって、今まで通りってわけにはいかなかっただろう」 「……オレンジやレッドは自業自得だ。それに、今まで通りいかなくたって、いつか克服する事は出来る」 そうした者達をキリトは知っている。あのゲームを経験しても、今を生きる彼らの強さを。 キリト達自身、その一人として足掻き続けている。 「そうだよなぁ。“生きてればな”」 ビクン、とキリトの体が震える。
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