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飼い主は鳥かごを移動し、
恋人と鳥を引き離そうと考えました。
それでも鳥は毎日毎日
綺麗な歌を唄いました。
恋人は決まった時間に
来る日も来る日もやってきました。
飼い主ははじめこそ激怒しました。
しかし時々遠くの森
を見つめる鳥を見て、哀しくなり、ついに逃がす決心をします。
飼い主は言いました。
「僕は小さい頃から
独りぼっちだった。
でも、決して誰かに涙を見せるようなことはしたくなかった。
それは次第に、自分の心を締め付け僕の心を真っ黒にした。」
鳥は静かに
言葉に耳を傾けました。
「君を手に入れたとき、
はじめは心が満たされていた。
しかし森を見つめる君を見て
次第に辛くなっていった。」
「僕は君の歌を聴いて、
いつか時間はかかっても君のように汚れのない心を持ちたい。」
夜が明け、恋人がいつものようにやってきました。
「さようなら。
……ありがとう。」
そういってかごの扉を開けました。
鳥は、狭いかごは嫌いでしたが
飼い主のことは大好きでした。
私が行ってしまったらこの人は独りになってしまう。
しかし恋人と森で暮らしたい気持ちもあります。
片方を選ぶなんてできませんでした。
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