夜が変わると同時に

4/5
前へ
/5ページ
次へ
飼い主は鳥かごを移動し、 恋人と鳥を引き離そうと考えました。 それでも鳥は毎日毎日 綺麗な歌を唄いました。 恋人は決まった時間に 来る日も来る日もやってきました。 飼い主ははじめこそ激怒しました。 しかし時々遠くの森 を見つめる鳥を見て、哀しくなり、ついに逃がす決心をします。 飼い主は言いました。 「僕は小さい頃から 独りぼっちだった。 でも、決して誰かに涙を見せるようなことはしたくなかった。 それは次第に、自分の心を締め付け僕の心を真っ黒にした。」 鳥は静かに 言葉に耳を傾けました。 「君を手に入れたとき、 はじめは心が満たされていた。 しかし森を見つめる君を見て 次第に辛くなっていった。」 「僕は君の歌を聴いて、 いつか時間はかかっても君のように汚れのない心を持ちたい。」 夜が明け、恋人がいつものようにやってきました。 「さようなら。 ……ありがとう。」 そういってかごの扉を開けました。 鳥は、狭いかごは嫌いでしたが 飼い主のことは大好きでした。 私が行ってしまったらこの人は独りになってしまう。 しかし恋人と森で暮らしたい気持ちもあります。 片方を選ぶなんてできませんでした。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加