愛しき日々

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「そこまでだ」須王は 有無を言わさず皆を睥睨し、桂を見た。 今まで騒がしかったのが 嘘の様に 静まり返り、 須王は桂に、 「貴方に その渾名が付いたのには、そうせざるを得なかったからだ。 今から 6年後、此処 長州藩は 『朝敵』となる」 何を言っているのだ?この子は?そんな事 ある訳がない。何故なら、我等 長州と朝廷との絆は 幕府よりも強いのだから。 切り替えの早い、栄太郎は 「須王 何故僕達は、朝敵に なるの?」 「全て、仕組まれた罠だったのだよ。栄太郎、お前達の 掲げている思想はなんだ?」 『尊皇攘夷』 「そうだ。そして、お前達に 話した来年に締結される 条約によって、更にその思想が 強まる。 その思想の頂が、お前達 長州藩 桂さん、貴方なら解るだろう?長州と朝廷の絆は 確かに強い。だが、言い方を変えれば、 牛耳っている。 それを 目障りとし、排除しようと 水面下で動いたのが 『薩摩』と『会津』そして、お前達が誠心誠意尽くしている『帝』だ」 皆、茫然となり 話しに付いて行けない。だが、桂は 「その話が 本当だとして何故、先程から 見て来た様な言い方を しているけど 君は一体 何者なんだい?」 須王は ニヤリと口角を上げ 「貴方達の生きた、 155年後の 未来から来た モノ」 不本意ながらね。 桂は 目を細め 須王に 「須王 この流れ 変える事は 出来るかな?」 ほぉう。瑣末な事に捕われず、物事の大局を見据えるか…。流石、維新の三傑と 呼ばれるだけの者よ。 「流れとは?異人を追い払う事か?それとも、今 言った事が ないようにする事か?」 「どちらもだ」 ククッ、欲深き男だ…。 「答えは、無理だ。 『全ては、異人達から 始まり 異人達で 達成される』」
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