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宴の準備も整い、皆が集まり 和やかに楽しんでいる中 一人、須王は一人 庭で、庭石に腰掛け 皆の様子を 静かに見詰めていた。
その時、真央が寒そうに手を擦りながら、須王を探しにやって来た。
「どうした?寒いのだったら 中で皆と一緒に居れば良いものを」
真央は、首を横に振り 須王の隣に腰掛け ぴとっと寄り添いながら
「須王ちゃん、寒くない?中は 暖かくて 楽しいよ?」
須王は、羽織りを脱ぎ真央に そっと掛けて 優しい眼差しで 松陰達が居る家の方を向き
「今は、これで良い。真央、聞こえるだろう?皆の笑い声を…心から笑い 合い、皆 互いを慈しんでいる」
真央は、羽織りの半分を 須王に掛け 「そうだね」と 須王と同じ眼差しで、家を見詰めた。
「いつまでも、同じ様にはいられない。だから、せめて この団欒を 私という 存在で邪魔は したくないのだよ……
それに、ほら見てご覧」
須王は 微笑み、真央は
感動する。
天上には、満月と宝石箱を ひっくり返した様に 輝く星達、そして地上には 満開の桜。その花びらと香りが 風に乗って ふんわりと 真央達の所に やって来る。
「素敵だね。ずっとこのまま でいられたら良いのに……」
「そう…だ、な」
須王は 瞳を閉じた。
移ろい行くは 人の性。
幸せでありたい と願いながら 他者の幸せを 踏み付けるのも 人の業…。
げに、浅ましき 生き物よ……。
「須王ちゃん?」
下を向くと 真央が「眠いの?寝ちゃったかと思った」心配そうに 見詰めて来るから
「いいや、眠くはない…」
次の言葉を 言おうとした時、晋作達が現れ
「あぁーっ、お前等!何 二人で 良い雰囲気してんだよ!!俺達も入れろや コラッ!」
晋作が、酒の臭いをプンプンさせながら須王に抱き着いて来て
「うふふ~ん。真央ちゃん」
頬をプニッと抓り 須王は
「残念だったな。酔っ払い。真央じゃなくて」
酔っ払いは、さっさと寝ろ。と首に手刀当てられ ス~ピ~おネンネしてしまった……。
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