【旋 律】前編 第八章

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  それでも、彼女と過ごす内に、無邪気で屈託ない彼女を『かわいい』と思うようになった。 その後、彼女に誘われるがままに、クリスマスにディズニーランドに行き、正月には、着物姿の彼女と初詣に行った。 「ねぇ、どうしてキスとかしてくれないの?」 甘えるように腕に絡んだ彼女に対し弱りながらも、じゃあ、と言うように唇を重ねた。 初めてのキスの感想は、唇が柔らかいということ。 飲んだばかりの缶コーヒーの香り。 不思議と、特に感動もなかった。 唇と唇を合わせるだけで特別なものになるんだな、と冷静に思った自分に戸惑った。 2月のバレンタインには、恐ろしく甘い手作りのチョコレートをもらった。 そして交際の雲行きが怪しくなって来たのは、バレンタインが終わった頃からだった。  
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