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「円香……」
静寂の中、ポツリとそう漏らした楓に、円香はそっと顔を上げた。
「……僕の知人にお金をとても欲している人がいて、株を勉強して、望む分だけのお金を手に入れたという人がいるんだ」
突然ガラリと変わった話題に、円香は戸惑いつつも、黙って楓の横顔を眺めた。
「……彼は望む分だけのお金を手に入れたのに、それだけでは足りない気持ちになって、その手に入れたお金を全て遣って、また株に投資し続けた。
色々あって結果的に彼は多額の借金を作ってしまったんだ。
―――円香はその彼のことをどう思う?」
そう言って視線を合わせた楓に、
「え……それは……『最初の時にやめておけば良かったのに』って思うわ」
「うん、僕もそう思う。
でも、人って手に入れたら、贅沢になる生き物みたいなんだ」
そう言って目を細めた楓に、円香は何も言えず息を呑んだ。
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