【旋 律】前編 第八章

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  「楓ぇ、明日、デートしない?」 毎日のようにデートに誘ってくる彼女に対して、 「ごめん、明日は母さんの仕事が遅くなるから、弟の面倒を見なきゃいけないんだ」 と断ることが続いた。 「じゃあ、家に遊びに行きたいんだけど」 そう言って来た彼女に「それは、別に構わないよ」と答えた。 彼女が家に来ると、まだ幼い弟は彼女の姿に大はしゃぎし、まとわりつき、 子供が苦手な彼女は、部屋から出て行こうとしない弟の姿に終止、不機嫌そうに顔をしかめていた。 「ねぇ、二人っきりになれないわけ?」 吐き捨てるような言葉も印象的だった。 そして母が帰ってきたので、いつものように一日の出来事を母に話して伝えた。 それが決定的だったらしい。 家を出たと同時に「もう、会わないわ、無理」と彼女は、顔を引きつらせながら言った。 「楓ってマザコン? お母さんお母さんって、マジキモいんだけど、ありえないわ。弟もウザイし。 いくら顔は良くても偏差値高い奴ってやっぱ普通じゃないわ」 そう吐き捨てて去って行った彼女。  
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