【旋 律】前編 第一章

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円香が洗濯物を干し終え、ゆっくり体を伸ばすと、娘の亜美が駆け寄ってきた。   「マーマ、目覚し時計がなってるよぉ」 まだ3歳の亜美の手には少し大きい目覚し時計を両手で持ち、急かすように声を上げた。 真新しく少し大きめの幼稚園のブレザー姿が愛らしい。 「もう家を出る時間?」   円香はいつも家事に熱中すぎて、幼稚園バスに間に合わなくなったりなどしないように、家を出る数分前に目覚し時計が鳴るようにセットしていた。 実際、円香が幼稚園バスに間に合わなかったことも間に合わなくなりそうだったこともない。 目覚し時計を鳴らすことによって幼い亜美に『もう家を出る時間だ』と気持ちの切り替えをさせることも目的の一つだった。  
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