♯1・入学式と出逢いと

2/22
前へ
/700ページ
次へ
‡ 陽向「さて」 どうしたものか。 校門を前にして、俺はポツンと立ち尽くしていた。 ちなみに、此処は本島から少し離れた離島で、海離(かいり)島という。 土地の問題で、中等部と高等部は此処にあって、通学時は満潮の為、朝のみ通学船が出ている。 潮が引けば、『干潮(かんし)の道』という干潟が露わになるから、その交通手段はいらない。 なんて、余談にすぎない。 陽向「…………」 此処へは予め訊いておいたから、難なく行き着いたワケだが、ある事に気付いた。 俺って普通に紛れていいのか? いや、そんなワケないよな。そんなワケあっても俺が困る。 あくまで俺は余所者だし、もとより意外と大きいこの桜閣高校に入って、勝手に迷って迷惑をかけるなんてもってのほか。 さらに、どうするもこうするもない現状。確かに、入学式から入る時点で皆と同じゼロスタートだけど……それでもな。 初日から馬鹿みたいな事で有名になりたくない。 とはいえ、このまま居るワケにもいかない。 海斗「…何やってんだ?陽向」 陽向「えっ?」 立ち往生している俺に後ろから声をかけてきたのは、他でもない海斗叔父さんだった――って、 陽向「……叔父さん」 海斗「オジさんじゃない!此処では海斗先生だ!」 陽向「また……ってか、来るの遅くない?」 海斗「いや、お前を驚かしてやろうと裏から回って来た」 子供でもそんな面倒くさい事しないよ、海斗叔父さん。 海斗「お前は今日が皆と初対面だからな、校長が僕に一任したんだよ」 陽向「それで、裏から回りこんで迎えに来てくれたと」 海斗「そういう事だ。有り難く思うがいい!」 陽向「何で上から目線なんだ」 冷静に突っ込みつつ、少し安心感を覚える自分に自己嫌悪が生まれたのは内緒だ。 ‡
/700ページ

最初のコメントを投稿しよう!

132人が本棚に入れています
本棚に追加