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陽向「さて」
どうしたものか。
校門を前にして、俺はポツンと立ち尽くしていた。
ちなみに、此処は本島から少し離れた離島で、海離(かいり)島という。
土地の問題で、中等部と高等部は此処にあって、通学時は満潮の為、朝のみ通学船が出ている。
潮が引けば、『干潮(かんし)の道』という干潟が露わになるから、その交通手段はいらない。
なんて、余談にすぎない。
陽向「…………」
此処へは予め訊いておいたから、難なく行き着いたワケだが、ある事に気付いた。
俺って普通に紛れていいのか?
いや、そんなワケないよな。そんなワケあっても俺が困る。
あくまで俺は余所者だし、もとより意外と大きいこの桜閣高校に入って、勝手に迷って迷惑をかけるなんてもってのほか。
さらに、どうするもこうするもない現状。確かに、入学式から入る時点で皆と同じゼロスタートだけど……それでもな。
初日から馬鹿みたいな事で有名になりたくない。
とはいえ、このまま居るワケにもいかない。
海斗「…何やってんだ?陽向」
陽向「えっ?」
立ち往生している俺に後ろから声をかけてきたのは、他でもない海斗叔父さんだった――って、
陽向「……叔父さん」
海斗「オジさんじゃない!此処では海斗先生だ!」
陽向「また……ってか、来るの遅くない?」
海斗「いや、お前を驚かしてやろうと裏から回って来た」
子供でもそんな面倒くさい事しないよ、海斗叔父さん。
海斗「お前は今日が皆と初対面だからな、校長が僕に一任したんだよ」
陽向「それで、裏から回りこんで迎えに来てくれたと」
海斗「そういう事だ。有り難く思うがいい!」
陽向「何で上から目線なんだ」
冷静に突っ込みつつ、少し安心感を覚える自分に自己嫌悪が生まれたのは内緒だ。
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