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『それでは、今年度新入生入学式を開式します』
司会の先生によって、講堂に集まる全員に開式の辞が告げられた。
俺はその集団には入らず、壇上の裏で海斗叔父さんと待機していた。
話によると、俺が初の島外からの新入生――というか転入生?らしく、対応の模範として、まずは校長から直々に紹介してみるという。
他の前例をアテにしないのは何故かと思ったが、敢えて口に出さなかったけど。
陽向「…………」
海斗「…何だ、緊張してるのか?」
妙に察しがいい。隣に立つ海斗叔父さんに突かれ、思わず苦笑を漏らす。
陽向「してないって言ったら嘘になる……けど」
海斗「けど?」
言葉を切り、俺は壇上で歓迎の言葉を述べている校長先生とクラスメートの方をチラと一瞥し、肩を落としてみせた。
陽向「……今は、期待と不安が勝ってるよ」
これも本音だ。
そう言い聞かせ、俺はまた講堂に集った面々を見やった。
陽向「生まれ育った環境が違うとはいえ、同い年だしな。何かしら、吸収出来るモノがあったりするんだろうなって。……ま、積極性に欠ける俺がうまくやってけるかの自信が、それ以上に不安なんだけど」
海斗「真面目だな?お前は本当に」
陽向「叔父さんが不真面目すぎなんだよ」
海斗「オジさんじゃなくてだな」
陽向「分かってるって。皆の前ではちゃんと分別するからさ」
海斗「ならいいが……陽向」
陽向「?」
海斗「青春は一度きりだ。後悔ない高校生活を、な。まあ、お前なら大丈夫だと思うが…」
陽向「叔父さん…」
海斗「ちなみに3年間の玉砕記録なんと30だからな!後悔はない!」
陽向「……少しでも尊敬した俺が馬鹿だったよ」
この期に及んで何の武勇伝を披露してんだ、この人は……
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