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校長『――それでは、今日から新しく入ってきた生徒を皆に紹介しようと思う。……君、入ってきて』
何時の間にか校長先生の話が一段落していた。
と思ったら、俺は叔父さんに背中を押され、壇上に少しよろけて姿を現した。
その様がおかしかったのだろう。他の新入生の所々からクスクスと笑い声が聞こえる。
校長『皆さん静粛に。……では、彼から自己紹介して貰いましょう』
動じない校長先生に心の中で感謝しておき、俺はマイクを受け取った。
陽向『――皆さん、初めまして。保積 陽向といいます。本日付けで、本島の都会から引っ越して来ました。分からない事だらけで不安ですけど、――さっき背中を押してくれた海斗先生も含め、皆さんと一緒に楽しくやっていきたいと思います』
海斗「何、人の名前出してるんだ!」バッ!
陽向『いや、事実だし』
海斗「うん、確かに間違ってないが――って、言うな!」ビシッ!
陽向『どんなノリツッコミですか、それ』
毛頭するつもりもなかった海斗叔父さんとの掛け合いで、講堂に笑い声が響き渡った。
案の定、叔父さんはぐっと言葉につまり、顔を真っ赤にしている。
何か考えてたんだろうな。初対面だから、初めはクールに決めよう!とか。
何でもかんでも、何かしらギャグが生じるからな、叔父さんって。
天性の才か。至極、要らない才だが。
陽向『先生、御陰様で緊張もほぐれました。アリガトウゴザイマス』
海斗「待て、棒読みではイカン!もっとこう、せ
陽向『それでは、これからよろしくお願いします』
海斗「なかった事にするな!」
キリがないので無理やり終わらせ、何か言いたそうな叔父さんを置いて、俺は再び裏に戻った。
緊張しなくて済んだけど、素を出すなよ叔父さん。
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