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舛川「――これで今日は終わりだけど、明日からは通常通りに授業が始まるから、ちゃんと忘れ物ないようにね?じゃ、解散」ダッ!
そう告げると、舛川先生はダッシュで教室を出て行った。
それを見送り、窓際一番前の席で、俺はハアと溜め息をつき、窓の外を見やった。
視界に映るのは、青々とした海。その対岸には紡刻島本島が見えている。
そんなきれいな風景に相反し、心中は至って不安だらけだ。
本当に、俺はこの島でやっていけるのか?
「おや、転入生君が暗い顔してるなぁ?」
陽向「っ!?」
突然、目の前に男の顔が現れた。
健康的に焼けた肌。短い黒髪は、爆発させたかのようにツンツンしている。
思わず間抜けた声を上げ、咄嗟に身を引く。
陽向「な……?」
「おぉ!なかなか反射神経いいな。運動得意だろ?」
陽向「まあまあ。……えっと……」
渉「ああ、自己紹介まだだったな。俺は蟹群 渉(かむら わたる)。渉って呼んでくれよ!」
陽向「ワタルな、分かったよ。俺は保積 陽向」
渉「陽向、よろしくな!」
陽向「よろしく」
渉「さっそく何だけど、一緒に帰ろうぜ?」
陽向「……いいよ」
まくし立てるとは違うけど、早い彼のペースに飲まれ、ほぼ一方的に一緒に帰る事になった。
彼――渉の見た感じで、分かった事が1つある。
そうとう、お節介な世話焼きだという事だ。
渉の後に続き、廊下に出
「――あ!」
陽向「え?」
今、左から女の子の声が?
自分の事じゃないかもしれないが、一応その方を向いてみる。
と、
陽向「え」
視界に映ったのは声の主などではなく、
――ガンッ!
陽向「痛っ!?」
……今、顔に直撃したモノ――そう、通学カバンだ。
……いや、何でだよ!?
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