♯1・入学式と出逢いと

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‡‡ 「ご、ごめんなさい!」 カバンの次に、ようやくその声の主が姿を現した。 取り敢えずカバンを拾い、軽くパンパンと叩いてやる。 「大丈夫ですか?」 陽向「ああ……目を疑っただけだ。気にするな」 「――あ、赤くなってる……」 陽向「えっ?」 そう言うと、彼女はそっと俺の頬に手をあてた。 背伸びをしてるのか、見上げる彼女の顔が近い。それに、触れてる手――じゃない! 陽向「大丈夫だっての。……ほら」 心配そうに触れてた彼女の手を離し、その手にカバンを持たせた。 それでもまだ気になるのか、「ん~」と唸り、顎に手をあてる。 大丈夫だと言ってるのに、一体何を懸念してるのか…… 「――決めた」 陽向「決めたって、何を」 「私、陽向君と一緒に帰る!」 陽向「は!?」 「先に昇降口で待ってて。友達に断っておかないと」 陽向「なっ――行っちまったよ」 ポツンと取り残されたので、俺は渉と顔を見合わせた。 陽向「何なんだ一体……」 渉「さあ?音成に任せてみようぜ」 陽向「オトナシ?名前か?」 渉「そう。音成 奏(おとなし かなで)。紡刻島長の一人娘にして、島イチの美少女さ」 陽向「音成、奏……」 ――まあ、確かに可愛いかったな…… 不謹慎にもそんな事を考えていた。 ――これが始まり。 俺と奏の初対面は、わずか1分ほどの邂逅だったんだ。 ‡
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