♯1・入学式と出逢いと

9/22
前へ
/700ページ
次へ
‡ 他愛もない話をしていたら、気付くと商店街に来ていた。 比較的多くの店が立ち並び、種類もなかなか。控えめながら賑わいを見せているそれを見ながら、俺は思わず「へぇ」と声を漏らした。 陽向「……あんま変わらないんだな」 奏「それって都会(あっち)は、って事?」 陽向「ああ……まあ、この倍以上はあるけどな?店も、人も」 奏「わぁ……息苦しくないの?」 陽向「むしろ、それがあって普通というべきだからな。ないと逆に不安になる」 奏「へぇ……」 隣で目をキラキラと輝かせる音成。 背丈の所為もあって、その様子は興味深々な子供のようだ。……まあ、まだ子供なのだけども。 奏「ねぇ、もっと話聞かせてよ!そういう、こっちでは想像もつかないような話♪」 陽向「いいけど……大したモノはないよ」 奏「私にとっては大した話なの!」 陽向「なるほど、……分かったよ」 奏「ホント?やったぁ!」 ギュッ、 陽向「!」 何だと思ったら、音成は俺の右手を両手で握り、ぶんぶんと大きく縦に振った。 不意を突かれ、ガクンガクンと体が腕に呼応するように揺れる。 正直、気持ち悪い。脳が揺れるという感覚なのか、左右の視線が定まらないでいる。 陽向「~~分かったから、離せ!」 奏「はい」パッ 陽向「え」 迷いなく、言われた通りに彼女は俺の手を離した。 上に振り上げた瞬間に。 まあ、妙なポーズになったワケだが…… 奏「……ジユウノメガミ?」 陽向「違うし、何故カタコト!?」 ‡
/700ページ

最初のコメントを投稿しよう!

132人が本棚に入れています
本棚に追加