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合流した渉を加えた俺達は、たまたま目についたファーストフード店に入った。
何故か奢ると言い出した渉にあやかり、3人分のドリンクとポテトを買い、窓際奥のテーブルに揃って腰を下ろした。
渉「――そういや陽向ってさ」
陽向「ん?」
渉「結構イケメンだけど、前居た街ではどうだったんだ?」
陽向「どうって、何が?」
渉「何って……コレだよコレ」
そう言い、渉はポテトをつまんだまま右手の小指を立てた。
どう見ても、指し示そうとしている意味と違うぞ。指先が横を向いてたら……
陽向「渉、お前……ホモだったのか?」
渉「いや待て!それは違うぞ!」
奏「やだ~~♪」
渉「楽しそうに言うな!」
陽向「…………フッ」
渉「鼻で笑うなよ!?」
奏「やだ……」
渉「素でドン引きされても困るんですけど」
奏「あ、認めた!」
渉「認めてねぇよ!?何でそうなった!?」
ギャーギャー騒々しくなる2人を傍目で見ながら、俺はポテトをつまんで口へ運ぶ。
ふと、何気なく窓越しの外へ視線を向ける。
陽向「…………」
少し遠くにある公園では、子ども達が無邪気な笑顔で走りまわっている。
道路を挟んだ向かいの歩道には、ベビーカーを押す若い夫婦の姿があって。
昼休憩をのんびりしすぎたのか、焦った様子で走って行くスーツ姿の男性。
穏やかに……でも、至って自然に時を紡いでいく。紡刻島、か。
奏「本当、渉って変態だよね♪」
渉「誰がド変態だ!」
……よくやるよな。こんな賑やかな事。
飽くことなく続けている2人に心の中で毒づきながら、代わりに微笑んでみせた。
なんとなくだけど、此処でなら俺は失わないで済む。
そう、漠然と思えたから。
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