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渉「そういや、カレーって確か香辛料の……」
突然顎に手をあて、考えるふうに視線を空に漂わせた渉。
一体、何をいきなり真面目顔になってんのか……
渉「はっ……そうだ、カライマサイだ!」
陽向「なんだその新種の民族みたいな名前は……それを言うならガラムマサラだろ」
渉「あれ、そうだっけ?ていうか、よく知ってんな?バ○ク・オ○マなんて」
陽向「それは米大統領だ!……ワザと間違えるなっての」
渉「んな怒るなって。……っての、入ってんだよな?」
陽向「とことん引きずってもまだ足りないか。……そこまで詳しくは知らないよ。自分でネットとか使って探せば分かるだろ?」
渉「お、そうだな。陽向は賢いな!」
陽向「自分で探す気がさらさら無かった事がモロ見えだぞ渉……って」
渉「免疫ないからな……仕方ないな、こればっかは」
俺と渉は苦笑し合い、存在感が一瞬で薄れた一方を見た。
まあ、その一方は音成なのだが、先刻の渉の冗談が真に受け過ぎたようで。
傍で固まってた彼女を促し、席につかせたものの……握ったスプーンが全く動く気配がない。
と言うか、音成自身が動く気配がないというか。
動かざるコト、山――もとい、岩の如し、だ。
渉「…………」
陽向「…………」
渉「……しかし、」
陽向「何だよ渉?考え込むフリして……」
渉「考えてんだって。……いや、今まではさ、此処まで固まって動けないのが続いた事なかったからな?珍しい事もあるもんだなと」
奏「そうよね~~いきなり何してんだか私」
陽向「ああ、本当にな」
――ガタンッ、
陽向&渉「お前だよ!?」
俺達のツッコミに、音成は屈託のない笑い声をあげ、取り繕うようにカレーをようやく口に運んだ。
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