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奏「ありがと♪ご飯までごちそうになっちゃって」
陽向「いや、構わないよ。1人で食うよりは、幾分楽しかったし」
渉「だろ?また近い内に、一緒に飯食おうぜ」
陽向「図々しく言ったお前が言うな。しかも、挙げ句に次を催促すんじゃねぇよ」
渉「いいじゃん、減るモノじゃないし」
陽向「……渉は次から食費徴収するぞ」
渉「んな殺生な!?」
午後9時をまわった頃、夕食を食べ終わった俺達は、一緒に街中の商店街を歩いていた。
流石に離島だと――と思っていたが、思いの外、軒並みの店にある居酒屋や食堂は人がまあまあ入っている。
その前を通ると、笑い声や今時のBGMが聞こえ、あまりどこも変わらないんだなと思った。
――同時に、少し虚しくもなったけど。
渉「……おっと、俺はこっちだから」
陽向「そうなのか。大丈夫か?」
渉「大丈夫だって!こんな物騒とは無縁の街で、そんな懸念する方が疲れるっての。じゃあ、また明日な!」
奏「じゃあね~~」
陽向「一気にまくしたてるな――って、もう行っちまったよ」
疾き事、風の如し……だったか、その言葉通り、渉の姿は商店街の向こうに消えていった。
思わず溜め息が漏れると、隣で音成がクスクスと笑っている。
小恥ずかしくなり、彼女に見えないように顔を背ける。
陽向「……何笑ってんだよ?」
奏「だって、渉と初対面の人が、その日にペースを合わせられるって初めて見たんだもん」
陽向「それはいいのか?」
奏「メリットは無いかな?」
陽向「ダメじゃねぇか」
奏「ダメじゃないよ?渉も、なんかいつもより楽しそうだったし」
楽しかった……か。
否定できないな。うん。
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