♯1・入学式と出逢いと

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‡ 奏「ありがと♪ご飯までごちそうになっちゃって」 陽向「いや、構わないよ。1人で食うよりは、幾分楽しかったし」 渉「だろ?また近い内に、一緒に飯食おうぜ」 陽向「図々しく言ったお前が言うな。しかも、挙げ句に次を催促すんじゃねぇよ」 渉「いいじゃん、減るモノじゃないし」 陽向「……渉は次から食費徴収するぞ」 渉「んな殺生な!?」 午後9時をまわった頃、夕食を食べ終わった俺達は、一緒に街中の商店街を歩いていた。 流石に離島だと――と思っていたが、思いの外、軒並みの店にある居酒屋や食堂は人がまあまあ入っている。 その前を通ると、笑い声や今時のBGMが聞こえ、あまりどこも変わらないんだなと思った。 ――同時に、少し虚しくもなったけど。 渉「……おっと、俺はこっちだから」 陽向「そうなのか。大丈夫か?」 渉「大丈夫だって!こんな物騒とは無縁の街で、そんな懸念する方が疲れるっての。じゃあ、また明日な!」 奏「じゃあね~~」 陽向「一気にまくしたてるな――って、もう行っちまったよ」 疾き事、風の如し……だったか、その言葉通り、渉の姿は商店街の向こうに消えていった。 思わず溜め息が漏れると、隣で音成がクスクスと笑っている。 小恥ずかしくなり、彼女に見えないように顔を背ける。 陽向「……何笑ってんだよ?」 奏「だって、渉と初対面の人が、その日にペースを合わせられるって初めて見たんだもん」 陽向「それはいいのか?」 奏「メリットは無いかな?」 陽向「ダメじゃねぇか」 奏「ダメじゃないよ?渉も、なんかいつもより楽しそうだったし」 楽しかった……か。 否定できないな。うん。 ‡
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