♯0・刻を紡ぐ島

3/9
前へ
/700ページ
次へ
‡ ――あ、そういや自己紹介がまだだったな。 俺は保積 陽向。 黒髪だけど、少し茶髪っぽくなってしまってる部分があるけど、よく見ないと分からない程度なので気にはしていない。 今年の春から、此処、紡刻島(ぼうこくとう)の桜閣(おうかく)高校に通う事になる――いわば新入生だ。 もともとは東京で生活してたんだけど、中学卒業を機に、叔父さんを頼って此処へ来たというワケだ。 両親は5年前に亡くなった。交通事故で、呆気なく2人はいなくなった。 つい最近までは、祖父母のもとで過ごしてきたけど、……その2人も去年の暮れに病死した。 叔父さんと叔母さんは、俺がそれらの整理の為に、頼ってきた事を知っている。 ――でも、当然ながら、この島民は知るワケがない。 この事実を表沙汰にして、いらぬ同情を買う必要はない。そう思っている。 ……けど、俺は決めていた。 此処で、『大切な関係』を紡ぐ事が出来たなら、俺の過去を全て話そうと。 紡げなければ、もう過去は過去のまま、誰にも話さないでいようと。 ‡
/700ページ

最初のコメントを投稿しよう!

132人が本棚に入れています
本棚に追加