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海斗「――さて、荷物はこんなトコか?」
陽向「これで全部だよ。必要最低限のモノだけにして、後は全部売っちゃったし」
海斗「ならいいが……今時のお前の年代にしては、閑散とした部屋になったな」
ぐるっと辺りを見回し、海斗叔父さんはそう言った。
俺は溜め息をつき、おきまりの如く頭をボリボリと掻く。
陽向「“必要最低限”だって言ったし、……それより、」
海斗「ん?」
陽向「本当にいいの?俺がこの家、好きに使っても」
そう、準備されていたのは、少し郊外に建つ一軒家だったのだ。確か、叔父さんの知り合いの家だったハズだけど。
すると、叔父さんは腰に手をあて、待ってましたとばかりに鼻を鳴らした。
その様子が豚か猪に見えるのは、きっと叔父さんがメタボな所為に違いない。
海斗「実はな、甥っ子が来ると話をしたら、家主がちょうど転勤で海外に移住する事になっていてな。お前に受け渡す事を快く了承してくれたのだ!」
陽向「そういう大事な事は前もって言って欲しかったけどな」
海斗「紡刻島民になる事と、高校入学の祝いだと思ってくれたらいい。この上ないサプライズなプレゼントだろう?」
陽向「正直びっくりなプレゼントだよ。……て言うか、家賃とかどうするんだ?」
海斗「いや、それは当たり前に僕の方で管理するよ」
陽向「常識外れてなくて、心底安心しました」
海斗「それはどういう意味だ?」
――過去を振り返ってくれ、叔父さん。
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