♯0・刻を紡ぐ島

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‡ 陽向「――こんな感じだな」 自分の部屋の荷物を大体整理し終え、俺はリビングに足を踏み入れた。 陽向「……用意周到――もとい、置き土産だな」 思わず苦笑を漏らす。 何故なら、リビングには前の住人が使っていたであろう家具が、自然と居座っていたのだから。 テレビは結構新品で、ガラスのローテーブルを囲むように、ソファが3つ。収納スペースに優れている棚もあって、なかなか充実している。 キッチンには炊飯器、食器洗浄機もあり、調味料や調理器具も一式揃っている。さらに、食器棚には様々な食器が所狭しと並び、ホームパーティーを開けるくらいの量がある。 陽向「………………ん?」 ふと冷静になると、疑問が浮かぶ。 此処の家主って、そんなパーティーを開くような人だっけ? それだけじゃない。この家自体もそう。 二階建てで、リビングとキッチン、トイレ、バスルーム、それ以外の部屋が3つに、物置部屋が2つ。 だけど、一番広いリビングは8畳くらいしかなく、特に広いワケじゃない。 などと思ってると、食器棚に何か貼ってあるモノに気付いた。 迷う事なく、ペリッと取って見る。そこには、漢字で二文字と、1つ。 『趣味』 それに続いて描かれたハートマークに、ご丁寧に赤いマジックで着色がしてある。 陽向「……ああ、はい。なるほどね――って」 紙をクシャッと握り潰し、自然な流れでスッと振りかぶる。 陽向「どうでもいいっ」 なんとなく目についたゴミ箱に投擲した。 スコンと綺麗に入ったが、同時に虚しくなった。 陽向「――どうでもいい事を考えてたんだよな、俺……」 ‡‡
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