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陽向「…………よし、これでいいかな」
明日に控える入学式の為の準備を終えると、時刻は午後10時になろうとしていた。
変わりなく賑やかな叔父の兄妹に安心感を与えて貰った後は、明日からは期待と不安の幕開けだ。
俺の事は何も知らない同い年のクラスメートや、先生――勿論、叔父さんを除いて。もちろん、俺は皆の事などまったく知らない。
1人、他人からのスタートになる。
でも、それがいいと思う。
人の過去に余計な詮索を加えなくても、知る必要がある事だけで十分、生活していけるのだから。
陽向「っと、忘れるトコだった」
パソコンを立ち上げ、使い慣れたツールから、自分の携帯に音楽を転送しておく。
お気に入りから毎回違う曲を幾つか送り、登下校時や休み時間はヘッドホンを欠かさずに持っていた。
――まあ、慣れるまでかかりそうだから、多分出番はないだろうけど……一応な。
あれだけずっと持ってたから、ないと落ち着けないってやつか。俗にいうケータイ依存みたいなモノだな。
話は変わるけど、音楽は好きだ。
リズム、メロディー、歌声、歌詞――その種類によって、人の心を動かせる事が出来るのだから。
興味は人一倍あるけど、踏み出すキッカケを持てないまま、ずっと暮らしてきた。……っても、多分機会はないんだろうけどな。
陽向「――こんなトコかな、……OKっと」
受信出来ている事を確認し、パソコンのディスプレイの電源を切り、ぐっと伸びをした。
陽向「~~っ、……ふぁ」
自然と漏れた欠伸で時間を再確認し、戸締まりを済ませ、部屋の照明を消した。
明日から、いいスタートがきれますように。
願望にも似た事を思いながら、俺は眠りに落ちていった。
……まあ、
大抵はスタートほどヒドいんだけどね?こういう展開。
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