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――ある世界では…、
「とうとう…、こんな所まで来てしまったか…」
「もう時間がありませぬぞ、長老!!」
「…仕方がない、あの魔法を発動させるか…」
「し、しかし…その魔法は禁じてでは…っ!!」
「そんなことを言っている場合か!!、もう時間がないのだ…喚ぶしかない…
異界の者を…っ!!」――
――その頃、この世界では…
『……だぁああっ!!、頭痛ぇっ!!』
この少年、いや少女の名は――白來紫苑、
普通にいる女子高校生だ。
ただ、普通じゃないと言えるのは昔から変な夢を見ることだけだった。
『痛い…、なんなんだよ…今日は……っ!?』
突然、紫苑の視界が揺らぎ始めた。
そして、夢でも聞いたことのある声が一瞬脳内を掠め、そのまま意識が途絶えてしまった。
『……、…ん…』
ゆっくりと目を開くと、そこはさっきまでの街中ではなく木々に囲まれた所だった。
『……ぇ…、……えええええええっ!?!?』
一気に意識が覚醒し、慌てて飛び起きた。
キョロキョロと周りを見渡し、そして自分を頬を引っ張った。
『……痛い、…ってことは…夢じゃないのかっ!?』
地味に痛い頬を擦りながら、近くにあった花を摘み取った。
『見たことない花だな…、ん??なんか、これ…菫に似てる…』
じっと花を見つめていると、いきなり花びらから目がぎょろりと覗いた。
『っ!?!?!?』
バッと慌てて、花を放り投げ距離を置いた。一方、放り投げられた花は最初はじたばたとしていたがそれも徐々に収まり始めた。
『な、…なんだよ…今の…っ』
まだ心臓がバクバクするのか、胸元に手を置き深呼吸を繰り返していた。
『…それより、ここどこだよ…』
ゆっくりと、見渡すが同じ木がバラバラに並んでいるだけで特に変わった所はなかった。
『この木も…、微妙に見たことあるのに何か違う…さっきの花もそうだったけど、いきなり目が出てきたりしないよな…??』
余程さっきの、花の出来事に驚いたのか木をペタペタ触るが何の変化もないことに安心の息をついた。
『………人とか、いないのかな…』
呟いた言葉に反応すりかのように、獣なのか大きな悲鳴に近い鳴き声が響き渡った。
『な、なんだ…っ!?』
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