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行ってみるとそこは、全身を毛だるまにしたマリモのような生物がいた。
『なんだ、あれ…き、気持ち悪っ…!!』
その声に反応したかのように、その獣はゆっくりと紫苑の方を向いた。
よく見たら、顔も毛で覆い尽くされていた。
「……オマエ…ダレ…」
『……っ…!!』
毛で覆い尽くされた顔から微かに覗く、緑色の淡い目がこちらを見た時背筋が冷たくなった。
『…っ…、お、お前こそ…誰だっ…』
強がって見せるが、声は微かに震えていた。
見たことない世界、そして生き物。いきなりのことで頭の整理が付かない紫苑は、いつもの威勢がなくなっていた。
『(こ、わい…っ…)』
ただ頭の中にはそれしか思い浮かばなかった。
逃げると言うことは、今の紫苑には出来なかった。
『……オマエ…、タマシイ…クレ…』
『……ひっ…!!』
もぞもぞと動いた後、体から大きな口が開いた。
紫苑は、軽く悲鳴をあげ固く目を瞑った。
「――シャイン・クロス」
その声と同時に、さっきの獣らしき声から悲鳴が上がった。
その悲鳴と同時に、大きな音を立てて何かが倒れた。
「――大丈夫…か??」
その声を聞き、ゆっくりと目を開いた。
綺麗な光輝く黄金色の瞳――
ただ純粋に、カッコいいと思った。
「大丈夫か??」
『……ぇ…、ぁ…うん…』
そう答えると同時に、相手の人はゆっくりと優しく微笑んだ。
そしてそのまま、優しく頭を撫でた。
「ならいいんだ、お前…名前は??」
『俺の名前は…、紫苑…白來紫苑だ…』
「ハクライ…シオン…??変わった名前だな…」
ポンポンと頭を撫でる相手を、紫苑は不思議そうに見つめていた。
その視線に気付いたのかまた優しく微笑んだ。
ヤ「俺は、ヤヨイ・クロードルだ、よろしく」
『よ、…よろしく…』
微笑んだまま、手を差し出すヤヨイに戸惑いながらも紫苑は手を差し出す握った。
ヤ「それにしても、なんでこんな所にいるんだ??」
『……え…??』
ヤ「ここは、危険地域だ。迷子…はないと思うが……」
『そ、それは…っ…』
モゴモゴと口を動かす紫苑を見て、ヤヨイをきょとんと見つめていた。
だが、ふと何を思ったのか歩き出した。
『……ちょっ、ヤ、ヤヨイさん…っ!?』
ヤ「とりあえず移動をしよう、ここは危ない」
『……あ、…はい…』
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