第1章 狂い変わる世界

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『ここは、宿…??』 ヤ「とりあえず、説明したいこともあるしな…今日は、ここに止まろう」 『……は、はぁ』 そこからは馴れたように、宿主の所に向かった。 紫苑は、上着のポケットの中に手をつっこんだ。 カサリ…、そう音を立てて何かが指に触れた。 『…(なんだ??)』 とりあえず、入っている物を取り出した。 黒く、白い十字架の模様が描かれている札のようなものだ。 『札…??、なんで、札が…』 ヤ「どうかしたのか??シオン??」 『い、いや…な、なんでもないです…っ!!』 声をかけられ、反射的に札をポケットの中に入れた。 そして、苦笑いをしながらヤヨイの所に向かった。 『部屋は借りられたんですか…??』 ヤ「ああ、205室だ。行くぞ??」 部屋に向かって歩き出すヤヨイの背中を見ながら、思考はさっきの札に向けられていた。 『(なんだったんだ…、さっきの札は…後で、ヤヨイさんに聞いてみるか…)』 とりあえず、札のことはいったん忘れることにし見えなくなるヤヨイを慌てて追い掛けた。 ―――205室――― 『あ、あの…ヤヨイさん…』 ヤ「なんだ…??、どうかしたのか??」 『その…この、札なんですが…』 さっき見つけた札を、ポケットの中から取り出した。 ヤヨイに渡したら、興味深そうに見つめた。何を思ったのか、懐から大きな本を取り出した。 ヤ「これは…、撃符だな…」 『げき…ふ??』 きょとんとした顔で、横から本を覗きこんだ。 そこには、今ヤヨイが持っている札と同じ物が描かれていた。 ヤ「召喚魔法の一種だ、この撃符には何かがストックされているんだ」 『この札に…、だがどうして俺のポケットの中に…』 ヤ「??、最初から持っていたわけじゃないのか??」 『この世界に来る前には、入っていなかったんだ…』 そう、ここに来る前のことを思い出した。 確かに、頭が痛くなる前はポケットの中に何も入っていなかった。 だが、この世界に来てから入れられること自体なかったのだ。 ヤ「…そうか、だが何か意味があるんじゃないか??」 『意味…ですか??』 ヤ「お前がこの世界に来たのと…、その撃符がなぜポケットの中に入っていたのか…」 その言葉に、ドクンと血が早くなるのがわかった―― .
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