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「では…はじめっ!」
黒龍の掛け声と共に、帆鷹が動いた。
素早く銀獅子丸の懐へ斬り込む。
しかし、銀獅子丸はあっさりとそれをかわすと、後ろへ飛び退いた。
なおも、帆鷹はその姿に追い討ちをかける。
銀獅子丸は、軽い足取りで木刀をかわし、どんどん後ずさっていく。
「どうした?かわすので精一杯か?!」
帆鷹の問いかけに、銀獅子丸は、刀で答えた。
ヒュッ、と風を斬りながら、木刀が帆鷹の鼻先をかすめる。
目にも止まらない早さで、銀獅子丸が間合いを詰めてきたのだ。
そのまま、銀獅子丸は一気に反撃にかかる。
カッ!カッ!
木刀同士が激しくぶつかり合う。
「お前は…一体何者なのだ?!」
帆鷹が、重なった木刀越しに、低い声で問いかける。
「このような剣の腕がありながら、何故宝物殿の番人に甘んじていた!?」
一旦、二人が離れ、間合いを取った。
銀獅子丸は、質問には答えたくないのか、目をそらした。
「家の問題か?…なるほどな。
私は代々、皇をお守りしてきた一族だ。お前のようなどこともわからぬ家柄の者に、簡単に皇子の護衛が務まるものか…」
(なるほど、帆鷹様の表情が険しいわけ
は…皇子の護衛が取って代わられることへの嫉妬…)
銀獅子丸は冷静に納得していた。
誰だって嫌なものだ。自分だけの役目を、人に取られてしまうというのは。
まして、皇子の護衛は名誉あること。帆鷹の気持ちもよくわかる。
「ウォォッ!覚悟!」
気合いと共に、帆鷹が力一杯に向かってくる。
「ーーでも、
俺は、やらなければいけないことがあるんです!」
銀獅子丸も走り出す。
「だから、あなたに負けるわけにはいかないんだっ!」
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