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カナヘビは本来警戒心が強く、人が近寄るとすぐに逃げてしまう。
それが肩まで登ってきたのは警戒心が皆無だった表れか。
そのカナヘビはすんなりと私の掌に収まった。
二人で私の掌にいる小さな爬虫類を見つめる。
「こいつ、まさか」
「いや、小学校の時だぞ?生きてるわけが…」
「にしては人に慣れすぎて…」
私はそっとカナヘビの小さくざらついた頭をなでてやった。
「!おい、撫でれるぞ!?お前…あの時のやつか?挨拶、しに来たのか…?」
掴まったカナヘビは咬みついてくるのが定石だが、こいつはおとなしく撫でられている。
不思議な気持ちだった。
だいたい、いくら山の中とはいえ家の中にカナヘビが入るなんて初めてだった。
ヤモリならたまに侵入するが。
あんな不思議なことは世界中で私たちしか経験してないだろう、と菜津と私は今でもよく思い出す。
その後、そっと外に出してやると迷いもなく走り去っていった。
これがカナヘビ事件。
私と菜津の面白事件簿に堂々の殿堂入りを果たした瞬間であった。
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