貴女に贈る恋の詩

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漆黒の闇よりも深い森の中ヲ 餓えた狼がさ迷い歩く 頬は痩け 足は棒のように あばら骨が浮きだし トボトボとあてもなく さ迷う 『赤い月』は潜血ヲ撒き散らすように空ヲ赤く染める 冷ややかな笑みヲ浮かべ 『餓えた狼』に話しかける 『狼ョ狼さんョ』 『そんなに腹ヲ空かせて 何処まで歩く』 月は笑う 狼は歩みヲとめ項垂れた 首ヲ持上げて振り向く 痩せこけた身体 その眼だけは赤く染まり 爛々と輝く 鋭い眼で『月』ヲ睨み付け また…トボトボと歩き始める 月は笑う 『狼~さん』『狼さん』 お前は 『森』一番賢い頭ヲ持って『森』一番の硬い牙ヲ持ち『森』一番の鋭い爪ヲ持つ 『お前に勝る者はなく』 『お前は森の覇者なのに』 『何故に!?』 『そんなに餓えて途方にくれる』 『月』はその『赤』ヲより『赤』に染め 『狼』ヲ問い質す 『狼』は振り向きもせずに項垂れたまま歩き続ける 月は笑う 『月』は森ヲも赤く染め 今度は優しく問いかける 『狼』ョ お前の『悩み』ヲ聞かせておくれ… 今夜は『満月』『赤い月』お前の『悩み』ヲ話してくれれば『望みヲ』一つ叶えてあげよう 月は笑う 『狼』は深く一つため息ヲ吐き歩みヲ止めて 抜き落ちそうな『牙』ヲ 剥き出しにしてゆっくりとかすれた声で 『語り始める』 『月ョ…お月様ョ お前は『人』に恋した事があるのだろうか…』 二十里先の森の中 『祈る少女に恋ヲした』 湖畔の縁で祈る少女に 『神』ヲ見た… されども俺は卑しき『獣』 『少女』ヲ恋してどうなることか ひたすら歩き考えた… 月は笑う 『狼ョ…お前の望みヲ言うがいい』 狼は目一杯に首ヲ伸ばし頭ヲ持ち上げ 大きな『遠吠え』ヲあげた 『月ョ… 俺は『人』になりたい…』 『人』になり『少女』ヲ 強く『抱きしめたい』 月は微笑む 次第に『赤』は夜明けと ともに朝日によって書き消され 森も穏やかな『緑』ヲ取り戻す 目が覚めた『狼』はまた トボトボ歩き始める 今度は… 『少女』に会いに歩くのだ そう… その…『二本の足で』 …おわり
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