プロローグ

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残暑の名残も薄れ始め、半袖のシャツでは温もりが恋しくなってくる。 そうは言っても、まだまだ昼間は油断などできない。汗ばむ程度で済ませられるならまだ我慢もできるが、照りつける太陽がアスファルトを焦がして蒸し暑い。 夜の涼しさに負けて長袖の服という選択肢も確かにある。 しかし私には、昼間の暑さの方が断然堪えるのだ。 周りを忙しく行き交う人混みをうんざりと眺めて、きちんと長袖を身に纏う女性に小さく拍手を送った。 どんなに暑くてもきちんと着こなして、暑さなど微塵も感じていないような表情は、正直真似などできはしない。 ギリギリまでまくったシャツの裾をさらにめくりあげる努力をしながら、かすかな振動に手を伸ばした。
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