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コンコン
ドアをノックする音が寝室に響いた。
カチャ……パタン
扉が開けられ、静かに閉められると
「失礼します」
清涼感のある男の声がした。
男は部屋に入り真っすぐ進んだ。
閉じられたカーテンの隙間から紅い光が左上から右下に差し込み、ベッドの下の方を斜めに照らしていた。
ベッドの向かって左側を通り過ぎ、カーテンを開けると紅暗い光が部屋に入りこんだ。
部屋は寝室にしては広めで紅い絨毯が敷かれていた。
家具はほぼ木材でできており、紅の優美が庶民のそれではないとわかるものだった。
男は黒い前髪が左目にかかり、唯一見える右の瞳は黒く、綺麗な顔立ちをしていた。
来た道を少し戻りベッドの左側に近づいた。
右手を前に直角に曲げ、執事のお辞儀をした。
「おはようございます、ダンテ様」
「ん~…おはよう、オンファ。」
オンファと呼ばれる執事の男に、横になりながら挨拶したのはダンテという"吸血鬼"の少年。
ダンテはベッドの掛け布団を両手でよけ、上半身を起こした。
黒くも少し赤みがかった髪にグレーの瞳、キッと鋭い長い耳をしている。
体制を戻したオンファはまだ眠りたいという顔をしているダンテに気づいた。
オンファは黒い右の瞳を閉じ
「シャワーになさいますか?」
と尋ねた。
「…ああ、そうだな。」
開かない目を擦りながら、おぼつかない足で部屋に備え付けの浴室に向かった。
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