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「えっと…あのあと、職員室に行けた?」 「うわ。覚えてないくせに。」 「お、覚えてるよ。今思い出したの。」 動揺した私を見て彼は笑いをこらえているようだった。 「ウソ。行けたよ。どうもありがとう。」 彼がちゃんと『職員室』にたどり着いたと訊いて、私はホッと胸をなで下ろした。 昨日の放課後。 廊下ですれ違ったとき、男子生徒が私に『職員室はどこですか?』と尋ねてきた。 これは、ちゃんと覚えている。 だけど、顔はボンヤリとしか覚えてなかった。 口答で説明してしまった私は、一緒に行って案内してあげればよかったと、あとから少し後悔した。 「ところで。何でそんなに目が真っ赤なの?泣いてた?」 でも、何でか昨日の人と雰囲気が違うような気がする。 「……別に。泣いてない。」 彼は、いつからここにいたんだろう。 後ろにいた気配すら分からなかった。
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