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「えーっと、健太がシングルベルだから自分の彼女と健太んちで慰めてるって」
「うん、2人が来てた」
「で、もう帰るから健太がまた寂しくなる前に電話してやれば?って。で、調子にのって電話してみたんだけど」
はにかんだような声に清水への怒りが消えて、なかったものになった。
帰り際に清水が言ったプレゼントのお届けが、つまりコレってわけだ。
「そっか。ありがと」
1日の終わりに癒されるような明里からの電話。
クリスマスは会えないと分かっていた。
お互いに仕事があるし、クリスマスだからって有給をとってまで会うほど子供でもない。
だからと言って、外のクリスマスムードに寂しさを感じないわけでもない。
「年末、そっちに帰るからね」
「28日だろ?俺は休みが29日からだから駅まで迎えにも行けないな」
「うん分かってる。実家に顔出すけど、夜には健太んち行くね」
ちょっと未来の約束が出来る関係っていうことに、すごく安らぎを覚えるって言ったら明里はなんて言うだろう。
会いたい、でも会えない。
そんなことを思うより、次はいつ会えるか約束できることを当たり前だと思わないように。
明里がいてくれないと約束すらできないということを忘れないように。
少しずつ自分の思い描く将来に近付いてきていることを実感しながら明里の声を聴く。
今の自分が、思い描く未来で思い描いた自分になっていることを願いながら。
どうやら今日は清水プロデュースなクリスマスイブらしい。
明日は清水感謝デーにしよう。
明里の声を聞き取ろうと目を閉じながら、そう思った。
END
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