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説明のつかない気持ちが胸の中で渦巻いている。
今日初めて会った人。
私をからかって嬉しそうに笑う人。
時折私をドキドキさせる人。
ねぇ…あなたは何者?
「今日はもう遅いし。」
禅の声で弾かれたように顔を上げる。
「1人で帰す訳にはいかないから。」
禅はそう言うと掴んだ手に少し力を込めると強引に自分の隣に座らせた。
唖然として禅を見上げると、そこにはまたあの何とも言えない惹きつけられるような笑み。
動揺してるのかもしれない。
感覚が麻痺してるのかも。
何だかいろいろ有りすぎて思考回路が働いていないのかも。
それともただめんどくさいだけなのかもしれない。
ま・いいか!
頭の中に出た結論はこれだった。
黙ってさっき禅が差し出したビールを開ける。
カシュッと小気味よい音を聞くと、一気に肩の力が抜けた。
久々に目の当たりにした『男』に動揺して、妙に力が入っていたことに気がついた。
落ち着いて見てみれば禅とは気が合うし、大好きな犬もいるし、気を使わないこの関係は楽。
そう思ったら初対面だろうがお泊まりだろうが気にならなくなっていた。
「今日は飲んじゃおっか?」
満面の笑みで禅に同意を求めると、禅も満面の笑みで言った。
「ハニーちゃんは一本だけな。足りなかったらカルピス作ってやるから。」
「けち!」
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