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「何でそんな不機嫌な顔してる訳?まさか自分から膝に乗せといて重いとか言ったらグーパンチするよ?」
禅は困ったように少し笑って、グイッと蜜を抱き寄せた。
「禅ちゃ…」
抱きしめられた背中に感じる力の籠もった手。
久々に感じる男の人特有の硬くて広い胸の温もり。
思い出したくない過去と、思い出してしまった温もりの心地よさ。
何も言えないでいる蜜に禅は絞り出すように呟いた。
「何で抵抗しないの?」
何で抵抗しないの?自問自答してみる。
上手な説明もキレイな言葉も思い浮かばない。
ただ言える事は一つ。
「嫌じゃない…から…。」
ふと緩められた腕。
離れようと思えば簡単に出来る。
しかし、蜜は額を禅の胸につけて俯いたまま離れようとはしなかった。
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