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「嫌じゃないから」そう彼女は言った。 苦しそうに絞り出された声は今にも消えてしまいそうだった。 お兄ちゃんみたい。 そう言われた言葉が頭をよぎって、逸る気持ちでつい口から出た言葉が、彼女を苦しめている事は分かっていた。 今、これ以上彼女に何かを求めてはいけない。 離したくない、この腕の中の温もりを失いたくないと切に望みながらも、そうしなければならない事は分かっていて… そっと抱き締める腕を緩めた。 彼女は俺のシャツの裾をぎゅっと掴んだまま。 そっと体が離れ… 2人の間に距離が出来る寸前、ピタリと止まって僅かな温もりを胸に残したままにした。 表情はわからない。 俯いたままピクリとも動かない。 無意識に抱き締めようとするこの手をキツく握って抑えつける。 抱き締めたい。 ただ抱き締めたい。 しかし抱き締めてしまえば、それだけで終わらない事は目に見えていた。 俯いたまま、そっと体が離れる。 無意識に覗き込んだ彼女の表情は、泣き出しそうな瞳と自嘲したように歪めた口元。 ゆっくり目線が上がって、視線が絡む。 長い睫毛が揺れて悲しそうに微笑む。 彼女は唇が触れる瞬間そっと瞳を閉じてキスを受け入れた。
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