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「こら!いつまでやってるの!」
にっこり笑って禅の鼻を摘む。
「4月の夜にTシャツ一枚は寒いよ!中入ろ!」
本当はキスの熱にうかされた体は火照っていて暑いくらいだったけど。
これ以上ここにいることは出来なくて。
わざとらしく身震いして笑ってみせた。
「ごめん。」
何に向けられた言葉なのかは敢えて考えなかった。
いつまでこうしていられるかわからないから。
せめて笑って過ごしたい。
だからあなたも笑ってよ?
その為には曖昧にしておく訳には行かなくて。
チクリと痛む胸の内は無視して軽快に切り出した。
「チューしちゃったけど、もうしちゃダメだからね!」
「何で?」
「1人1チューって決まってるからよ!」
「みんな?」
「まさか!ここ5年間でチューしたのは禅ちゃんだけ。やったね!ラッキーマン!」
「そのルールどうにか変更出来ないかな?」
にっこり微笑む禅の笑顔に思わず引き込まれそうになったけど、とっさに軽口を叩いてごまかした。
「禅ちゃんならさ、チューフリーな女の子、いっぱいいるでしょ?ルール変更よりそっちのが良いと思いますよ!」
「生憎俺の唇はワガママでね。ここ10年OKが出たのはハニーちゃんだけなんだよ?だからどうかな?検討してもらえない?」
笑みをたたえた口元とは裏腹に真剣な眼差しが蜜を捉える。
見つめ合ったら終わり。
蜜はひらり禅の膝から飛び降りた。
「あ~!禅ちゃんばっかりサンダルはいてズルい!」
蜜はピョンとベンチに飛び乗ると禅の腕を引いて立たせた。
「おんぶしてくれたらちょこっとルール改正する!」
言い終わらないうちに禅の背中に飛びついた。
「どうせなら抱っこの方が良かったな。」
「いいの!あ~いい眺め!身長いくつあるの?」
「185cmくらい?」
「じゃあ私今190cmくらいの眺めって事?世界変わるなぁ!」
禅はバルコニードアを屈んでくぐってリビングに入っても蜜を下ろそうとしない。
「もういいよ?」
「ルール改正の話がまだなんだけど?」
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