15839人が本棚に入れています
本棚に追加
10年前の出来事は消す事も忘れる事も出来ない。
もう罪を償う事すら出来ない。
でも『愛』という感情を知ってしまった今、本当の罪は何かやっと気付いた。
今まで数え切れないほど心の中で唱え、何度も口にした謝罪の言葉を、今本当の意味で呟いた。
「ごめん、真希(マキ)」
直接謝罪する事は今はもう不可能だけれど。
禅が悪い訳じゃない。
皆がそう言った。
だけどやっぱり悪いのは俺だ。
愛していない、という事実に背を向けた俺の責任。
この10年、後悔と罪悪感が重い足枷となっていたと思っていた。
自分に恋愛などする資格はないと。
それを免罪符の替わりにして。
でも違った。
『運命』なんて言葉、少し前の自分なら一笑に付すことすらなかった。
でも今は現実のものとして受け入れる他ない。
彼女に出会ってしまった今は。
罪悪感が消えた訳じゃない。
ただ今は、そんなことになりふり構ってなんかいられなかった。
もう免罪符は必要ない。
.
最初のコメントを投稿しよう!