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静かに涙をこぼしながら時折「No」と呟く。
起こそうかと何度も思った。
でも出来なかった。
こんなにも苦しそうに涙を流しているのに、起こせば何があったか聞かずにはいられないと思った。
どれくらい経っただろう。
やっと涙は止まり、また規則的な寝息が聞こえるようになった所でそっと体をずらした。
うっすら残る涙の跡をそっと拭ってそのまま頬をなぞる。
「ごめん、ルール守れない…」
小さく呟くように謝罪すると唇を奪った。
名残惜しそうにゆっくり唇を離す。
すると突然蜜が小さくフフっと笑った。
一瞬起こしてしまったかと焦ったが、瞳は堅く閉じたまま。
もう一度キスしよう顔を近付けるとふいに蜜の手が禅を抱き締めるように伸びて来た。
「フフフッ…ぜんちゃ…」
そう確かに禅の名前を呼んだ。
「泣いたり笑ったり忙しいやつだな…」
禅はそう呟くとにっこり笑って再び蜜を抱き締めた。
蜜の頭を抱き込むように抱き締めて目を綴じる。
いつの間にか雑念はどこかに消えていて、鼻孔に広がる蜜の香りに包まれてゆっくり眠れそうな気がした。
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