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目線をずらせばキッチンに立つ禅の姿。 「おかえり!早かったね。」 「すぐ近くだから。ハニーちゃんも食べなよ。」 そう言って紙袋を差し出した。 「あれ…ここって…」 見覚えのあるその袋は蜜のアパートのすぐ近くのパン屋のものだった。 「そんなに近いっけ?」 「うん。最短距離で2kmくらいかな?」 「何で行ったの?自転車?」 「いや、ランニングがてら走って。」 禅はそう言って皿をダイニングテーブルに並べるとコーヒーをついだ。 走って? 2kmを往復? 「部活か!」 「え?」 かなり遅いタイミングの突っ込みに禅の手が止まる。 「いやトレーニングと言った方がいいかな?昨日今日と走ってなかったから。」 そう言って笑う禅は汗ひとつかいていない。 往復4kmを走って平然としていられるなんて考えられない! 私が走ったら多分1km走れないよ! 「どうしたの?食べないの?」 禅の顔をじーっと見ている蜜に問いかける。 「食べるけどさぁ!」 蜜はようやく袋からチョコクロワッサンを一つ取り出して皿に置いた。 「けど、なに?」 「その年でよく走れるね?」 真面目な顔をした蜜にそうストレートに言われてガックリ肩を落とした。
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