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「あ、いえ。」
「昨日何度も電話したんだけど。」
「ごめんなさい。夕方まで爆睡しちゃって。その後海人くんが来たりしてバタバタしてて。」
「うん。禅から聞いたよ。大丈夫。悪いのは禅だからね。」
勘の声は優しいが、明らかに禅に向けての敵意を感じる。
「いや禅ちゃんもバタバタしてたから気付かなかったんだと」
「いや気付いてた。夜になっても電話に出ないから禅に電話したらコール途中で切られてね。」
知らなかった。
でも何で?
「よくわからないけど、まぁ大丈夫です。心配かけちゃってすみませんでした。」
「蜜ちゃんが謝る事はないよ。何度も言うけど悪いのは禅だから。」
もう何も言うまい。
ごめんよ。禅ちゃん。
私は裏切ります。
「あはっ全くですよね!とりあえず私は無事って事で尚に伝えてください。」
「うん。これから迎えに行くから。」
何でそうなっちゃうのよ~!
蜜の心の叫びは届かず、ゆっくりとした低い声は禅との交代を要求した。
黙って携帯を禅に差し出す。
「はい?え?必要ない。だから必要ないって言ってるだろ!はぁ?だとしたら何だよ?関係ないだろ!おい、ちょっ!待てよ!おいっ!勘っ!」
どうやら通話は終了したらしかった。
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