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禅の苦々しい表情に海人は蜜の服の裾をぎゅっと掴む。 「ぜんにいちゃんケンカしたの?」 「大丈夫だよ。」 海人の頭を撫でながら出来るだけ優しく言う。 「ほんと?」 「うん。ほんと。」 しかしちらりと見た禅の顔は険しい。 「禅ちゃん!禅ちゃんってば!」 「あ?」 怖っ!睨まないでよ! 海人くんも怖がってるじゃないのよ! 禅はハッとしてすぐに笑みを浮かべるものの… 目が笑ってない! 「そんなに怒らないでよ!ちゃんと言っておくからさ。」 「怒ってないけど。勘がいちいち介入するのが気に入らないんだよね。」 「そうじゃないの。勘さんじゃないの。連絡し忘れてたのがいけないんだよ。こうなるって分かってたのに。」 「え?」 「勘さんは、多分尚の姿を見て怒ってるんだと思う。きっと凄く心配してたんだと思うんだ。」 えへへ、と笑っているのに泣きだしそうな蜜。 「ハニーちゃん、もう…」 「ごめんね、巻き込んで。私からちゃんと説明するから。迷惑はかけないと思うし。」 「迷惑って何?俺は迷惑だなんて思ってないけど?」 「ごめん。」 「謝らないでよ。頼むから。」 禅の真剣な表情に、堪らなく罪悪感を感じる。 あぁ、やっぱりこうなるよね。 過去は消せない。 必死に前を向いて歩いてきたつもりだけど、太陽が出れば影は濃くなるもの。 自分の影からは逃げられない。 ピーターパンは何故わざわざ影を捕まえて縫い付けたんだろう? 私なら、絶対にしないのに。 .
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