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何に?なんて聞ける雰囲気ではなかった。 それは抱きしめられた腕に籠もる力が、容易に物語っている。 今、自分の気持ちに素直に従えたらどんなに良いだろう? 経験不足とブランクで、この気持ちが恋と断言出来るかと言えば微妙だけど。 この腕の温もりが心地よいと素直に思ったのは間違いない。 「あはははっ!ヤだなぁ!もう!」 そっと胸を押してその腕から逃げ出す。 「マジで大丈夫だから!尚はね、ただキャアキャア騒ぐのが好きなだけなんだから。いつものことなんだよね。」 うまく笑えてる? 引きつりそうなくらい口角を上げて笑う私に、禅は微笑み返してくれた。 「ごめんな。俺、急ぎ過ぎてたな。」 その優しさに、無理に作った笑顔はいとも簡単に崩れ去った。 「私に出来るのは友達以上恋人未満までなんだ。ごめんね。」 これ以上はごまかしきれなかった。 .
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