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ピンポーン!
ドアホンが尚たちの来訪を告げると
禅の笑顔が一気に曇った。
ちっ!
舌打ちしながらモニターも見ずにドアを開けた。
「蜜ちゃん迎えに来たよ!下に尚を待たせてるから先に行ってて。」
「あ、はい。」
一緒に、と言いかけた言葉は喉元まで来てまた飲み込んでしまった。
ニッコリ笑っている。
だけど・・・
目は全然笑ってない。
「禅ちゃん、昨日は迷惑かけちゃってごめんね。また遊びに来るね!」
「今度はコイツに内緒でね。」
至近距離で睨み合う二人。
このままスルーしたい気持ちをグッと堪えてゆっくり二人の間に立った。
「勘さん、勘違いしないでくださいね。私は自分の意思でここにいたんです。勿論心配するようなこともなかったし。」
「うん。分かってるよ。でもちょっと禅と話があるんだ。」
「そうですか。でもこれだけは言っておきます。」
蜜はひと呼吸おいて真っ直ぐ勘を見つめた。
「お願いだから禅ちゃんを責めるようなことだけはしないでね。出来れば私と禅ちゃんのことはそっとしておいて欲しいの。少しの間だけでいいから・・・」
笑顔を作ることが出来なかった。
どうか私達のこの関係を引っ掻き回さないで欲しい。
いずれは嫌でも離れることになるのだから。
「ハニーちゃん、大丈夫だから俺に任せて。海人、ハニーちゃん帰るって!挨拶しろよ!」
海人はすぐにやって来て蜜にぎゅーっと抱きついた。
「今度いつ遊ぶか約束してないよ?」
「そうだね。禅ちゃんと相談しておいてね。」
海人は黙って頷いて蜜から離れると勘の脛辺りを蹴っ飛ばした。
「いって!」
「勘がお迎えこなければ良かったのに!」
「おまっ!」
海人の一言に勘は絶句、禅はしてやったり顔で頷いた。
「じゃあ尚待ってるから行くね!」
「気を付けて。」
禅はそう言うと蜜を抱き寄せて頭のてっぺんにキスした。
「うん。またね!」
何事もなかったように手を振ってドアから出ていった蜜を勘は呆然と見送っていた。
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