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マンションのエントランスを出ると見慣れた勘の車。
そしてその車の前で仁王立ちしている鬼の形相の尚。
「あはっ。」
そうするしかなくて取り敢えず笑ってみた。
「あんたねぇ!どれだけ心配したと思ってるのよ!電話にも出ないで!」
「ごめん。夕方まで爆睡しちゃっててさ。その後禅ちゃんの甥っ子が来て買い物行ったりご飯作ったりお風呂入れたり寝かし付けたりしてたのよね。」
「で?泊まったのは何で?」
「遅いから泊まって行けば?みたいな・・」
「はいそうですかって泊まるキャラじゃないでしょ?なにがあったのか詳しく!」
「禅ちゃんが飲んじゃったから送れないし、こんな夜遅く帰せないっていう話になりまして。」
「じゃあ禅さんは何もかも計算ずくだったと。であんたはそれに乗っかったと?」
「いやぁ、計算ずくかどうかまでは・・・」
「はぁぁぁ!?計算してたに決まってるじゃん。大体そもそもいつそんな関係になったの?」
尚にそう言われてふと気が付いた。
一体いつからこんな関係になったんだっけ?
何かのキッカケがあった訳じゃない。
気が付けばこうなっていたとしか説明できない。
「えっと、何となく?」
「あんた私をバカにしてんの!?」
「まっまさか!本当に、えーと、こうズルズルというか、さらーっとというか、いつの間にかと言うか。」
全然説明になってない。
わかってるけど説明できない。
恐る恐る黙ったままの尚を見上げると目に涙を浮かべた顔がすぐそこまで迫っていた。
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