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「蜜ちゃんの言いたいことは分かった。だけどこの先禅にずっと好い人が現れなかったらどうするの?」 「えっ!?」 予想していなかった勘の問いかけに蜜は驚いたまま思考が停止してしまった。 えっと・・・ それは想定外だったな・・・ 「だってそういう可能性もあるだろ?」 「そう!そうよ!」 「うん。そうだね。」 「禅にちゃんと伝わってる?蜜ちゃんの気持ち。」 「多分。」 「ちょっと!多分って何よ?多分って!」 やっと勢いを取り戻した尚が必死にそう言う。 でも多分としか言いようがない。 契約を交わしたわけでもなければ詳しく話を詰めたわけでもない。 「今は・・・」 「えっ?」 「今は、恋人未満でも良いって意味だったら?」 勘のやけに落ち着いた声に、尚も蜜も黙ってしまった。 そもそも禅は何て言ってた? 禅は勘に何て言ったんだろう? 考え込む蜜に勘は優しく問いかける。 「とりあえず、期間とか形態とか気にしないでみたら?」 勘の言葉の意味は分かるけど、思考がついて行かない。 問いかけに対する返事が思い浮かばない。 まるで頭の中に靄がかかった様だ。 言葉を紡ぎ出すことが出来ずにいたが、尚の一言によって一気に靄は消えた。 「そうだよ!そうやって付き合って行くうちに本物になるかもしれないじゃん!」 フフッと小さな笑みを漏らし蜜は静かにしかしキッパリ言った。 「それはない。友達以上恋人未満ってそれだけだよ。たとえ1日限りだとしても、10年続いたとしても。」
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