15838人が本棚に入れています
本棚に追加
夕方まで海人を預かる予定だったが、急遽午前中に送る話になり、午後はやっと二人きりになれると思っていた矢先、邪魔が入った。
こんなことになるくらいなら昨夜の電話、シカトするんじゃなかった。
禅は海人に気付かれないように小さく溜め息をついた。
姉の産婦人科は実家から車で10分ほどの場所にあった。
実家の総合病院にももちろん産婦人科はあるが、姉自体が産婦人科医という立場上、流石に自分の患者とベットを並べるのを躊躇ったのだった。
「よし。着いたぞ。」
駐車場に車を停めると後部座席の扉を開いて海人を下ろす。
勝手知ったると言った風に海人は真っ直ぐ病院の中に消えて行った。
禅が病室のドアを開けた瞬間、しまった!と思わず片手で顔を覆った。
幼稚園児に昨日の約束を覚えていろと言う方が酷だったかもしれない。
車から下ろす前に言い聞かせるのを忘れてた・・・
「でね、たまごのコロッケも作ってくれて、一緒にお風呂で遊んだんだ!」
あぁ、確実に話しちゃってる。
さて、どうしたものか。
ゴシップ好きで世話焼き、尚且つ今はベット上の生活で絶対暇をもて余している姉がこの話題に食いつかない訳もなく・・・
「具合は「あんたはどうなの?」」
どう?という言葉を発する前にニヤリ顔で言われてしまった。
「別に。普通。」
「普通ねぇ!?ふーん。普通?へぇ!?普通なの?」
「あのなぁ!」
「海人?ハニーちゃんって誰?」
「禅にいちゃん家で寝てた女の子だよ?さっきもお話してあげたじゃん。僕がキスで起こしてあげたんだよ。眠り姫も白雪姫もみんなキスで起きるから!」
あぁ!そういうこと!?
姉に追及されていることを一瞬忘れて海人の説明に聞き入ってしまった。
だからいきなりキスしたのか。
アイツにとって眠っている女の子はみんなお姫様かよ?
まだガキのくせに末恐ろしい奴だな!
最初のコメントを投稿しよう!