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うまく言葉が出てこない。
足が地面に縫い付けられたかのように動かない。
蜜はただ吸い寄せられるように禅を見つめることしかできなかった。
「幽霊でも見たような顔。」
禅はそう言ってニッコリ笑った。
その笑顔に胸が締め付けられる。
必死で気付かないふりをしてたのに。
平気だって、毎日言い聞かせてたのに。
全然ダメだ・・・
頭の中では警報が鳴り響いてる。
絶対ダメだ、と。
もう一度あの腕の温もりを知ったらもう引き返せないと。
しかし体は動き出していた。
あんなにあちこち痛くて歩くのも億劫だったはずなのに。
痛みなど感じる暇もなく駆け出していた。
だってあの笑顔で、両手を広げて待ってるのは反則でしょう?
飛び込んだ腕の中にすっぽり包まれて、キツく抱き締められる。
もう頭では何も考えられなかった。
頭の中の警報も気持ちのブレーキも全部どこかに消えてしまっていた。
ただがむしゃらに禅にしがみついていた。
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