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「ちぇーっ!」 「ナニがちぇーっ!よ!」 「もっと続きしたかったなぁ。」 「もう出る!」 立ち上がろうとした蜜の腕を禅が掴んで引き戻す。 「まだ。」 そう言ってまた背後から抱き締めた。 「おんなじ手にはひっかからないわよ!?」 禅の腕から逃げ出そうと蜜は必死にもがくが、蜜を抱き締めるその腕はびくともしなかった。 「離しなさい!」 「イヤ。」 「禅ちゃん!」 「もうしないから。抱き締めるくらいイイだろ?」 耳元で囁かれた声は、今までとはうってかわって真剣味を帯びていて。 蜜は今まで大暴れしていたのが嘘のように大人しくなってしまう。 「凄く・・・逢いたかった。 ハニーちゃんは俺に逢いたかった?」 「う、うん。」 素直にそう言ってしまって、慌てて言い訳を考える。 しかし禅の言葉に思考が停止した。 「良かった。こんなに逢いたかったの俺だけかと思った。」 安堵したように禅が呟いたその言葉に、胸の奥がざわつく。 そんなこと言わないで・・・ これ以上好きにさせないで・・・ ぎゅっと目を瞑って胸のざわつきが収まるのを待つ。 「勘がさ、ハニーちゃんの連絡先教えてくれなくてさ。」 「え?」 「どうしようか昨夜宿直の間考えて、もう待ち伏せしかないなと思ってさ。ストーカーまがいだよな。」 「そうだね。」 「でも・・・」 「でも?」 「そうまでしても逢いたかった。」
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